【2024法改正】労務・人事関連法令改正の5大ポイントを総チェック!
目次
Scene1.2024年度、人事・労務関連で大きく変わる法令改正は5つ!
2024年は新年度からたくさん法律が変わったけど大丈夫?パパの会社は言っちゃ悪いけど時代遅れだったよね…。
え。法律が変わっても、会社がなんとかしてくれるでしょ?パパは何もしなくていいよね~。
そういうところが…。社風だけじゃなくて本人の意識アップデートも必要ね!
2024年度に改正された人事労務に関連する法律は、大きなものとして以下の5つがあげられます。
(2)時間外労働の上限規制
(3)裁量労働制における対象労働者の要件の追加
(4)短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大
(5)障害者雇用率の引き上げ
とくに、(1)労働条件の明示義務と(2)時間外労働の上限規制は、企業側だけでなく働く人も自分の権利として知っておかなければいけないポイントや、勤務管理でやらなければいけないことが増えているはずです。自分が勤務している企業がきちんと法対応しているかどうか、きちんと把握しておきましょう!
Scene.2 労働条件の明示義務
「労働条件の明示」って、パパは一応正社員だから今までと変わらないよ?別に改めて説明されることなんてないよね。
ダメだから。正社員とかアルバイトとか関係なく、企業が「全従業員に説明する義務」なの!将来的に転勤や部署異動の可能性があることなんかも先に伝えておかなきゃいけないんだよ。そんなんだから“窓際”に異動されても文句言えないんじゃん。
え!パパ、将来、窓際行きなの…!?
「労働条件の明示」の義務化で大きなポイントは、正規・非正規という雇用形態にかかわらず全従業員に労働条件を明示しなければならない点です。
「労働条件」は、以下の4つです。
・就業場所・業務の変更の範囲
・更新上限の有無と内容
・無期転換申込機会
・無期転換後の労働条件
<必要な対応をチェック>
・適用開始時期
2024年4月1日から、すでにスタートしています!
・契約関係書類の見直し
企業側は、労働条件通知書や雇用契約書などの書式の見直しと整備をしなければなりません。明示する項目に漏れがないか再チェックしておきましょう。
・有期契約の従業員への対応
派遣社員やスポットで雇用したアルバイト従業員などの有期労働者には、通算契約期間や更新回数を確認しておきましょう。とくに派遣社員では、無期転換ルール適用者の把握も必要です。
・求人募集でも注意
また、4月1日以降は、求人募集の際の明示事項も追加されているので、人事・採用担当の方々は要注意です。
・罰金アリ
違反した場合には罰則があり、「30万円以下の罰金」が科されることがあります。
Scene.3 時間外労働の上限規制
パパが新入社員だった頃は「24時間、働けますか」って流行ったんだけどな~。
昭和すぎ。平成生まれのくせに。
男は外で一生懸命働いて、家を守るんだよ~。ちょっと前までは「残業当たり前!」だったんだけどな。
「男は、女は」ってジェンダーバランス悪すぎ。お腹に赤ちゃんがいるママを放っておいて大丈夫な神経疑うし。大きなプロジェクトに関わってるわけでも、現場仕事してるわけでもないのに残業多いって、業務効率が悪いからじゃないの?
……(ぐうの音も出ない)。
「時間外労働の上限規制」は、2019年4月以降、段階的に開始されてきました。中小企業はも20年4月~適用されています。19年の改正では「猶予期間」とされていた4つの業種にも、24年4月1日から適用範囲が拡大したことがポイントです。
これまで猶予中とされていて、今回適用される業種は4つです。
・建設業:建設現場で働く従業員
・自動車運転:タクシー・バス・配送車両などのドライバー
・医療:医師
・精糖業:砂糖の製造業者(沖縄県と鹿児島県に限る)
従来の時間外労働の上限は「原則として月45時間・年360時間」という基準。また、「特別条項」があり、労使合意がある場合は、法律上制限なしとして労働が可能でした。
4月1日以降は、特別条項により労使合意があったとしても、以下4点は厳守です。
・時間外労働が年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計が、「2~6ヵ月間のすべての平均」が「1ヵ月当たり80時間以内」
・時間外労働が月45時間を超えられるのは、年間6ヵ月が限度
<必要な対応をチェック>
・勤怠管理・従業員管理システムの見直し・導入
適用が拡大される4業種に当てはまる企業は、これまでの勤怠管理・従業員管理の方法を刷新する必要があります。とくに建設事業やドライバーは人手不足が深刻なため、休日の固定化が難しいシフト制で、週休2日が確保できていないことも多い業種です。出勤・退勤だけでなく、休憩や研修などの時間もそれぞれ記録が必要です。場合によっては管理システムの新規導入・入れ替えの検討も行わなければなりません。
・付帯する「健康・福祉確保措置の強化」の厳守
とくに医療では、長時間・休日労働の温床となっているといっても過言ではなく、本改正が適用される4業種のなかでも特殊な勤務体制です。労働時間の上限規制に加えて「健康・福祉確保措置の強化」によって、シフト間でどれくらい時間を空けなければならないか、産業医との面談など、従業員の健康維持に必要な措置を規定しています。法改正にあわせて実効性のある運用が求められています。
・従来の考え方、悪い慣習の抜本的見直し
コロナ禍でも明確になった「命に関わる仕事だから医療現場は長時間労働でもしかたがない」という考え方。エッセンシャルワーカーの健康維持は、緊急時には二の次にされがちです。しかし、誰かの犠牲の上に成り立つ仕事など、本来あってはいけないものです。法律や規則を変えることはもちろんですが、根強い慣例から根本的に変えていかなければなりません。
・罰則あり
本改正に違反していると「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されるおそれがあります。
Scene.4 裁量労働制の項目追加
半年後にはレーワも産まれるし、時間や場所にとらわれずに仕事ができたらいいな~。育児も手伝えて、ママもきっと喜ぶよね!
そもそも専門職として働ける知識とスキルがないと裁量労働制で契約自体ができないでしょ!ただ在宅になるだけだったら、自宅待機だから。
裁量労働制は、働く人にも企業にもメリットが大きい働き方です。働く人は、成果さえ出せれば、自分の裁量次第で働く時間帯・勤務時間・場所に縛られない働き方ができます。企業も勤怠管理といった細かな管理義務や残業代はなく、専門知識がある人材を活用できるので、双方にメリットがあります。ただし、裁量労働制を提供してよい業種には制限がありあます。適用してはいけない業務を行う従業員に、形だけ裁量労働制を適用し、残業代を未払いにした事案などがあり、実態の是正のため本改正となりました。
まずは「裁量労働制」には2種類あることを押さえておきましょう。「専門型」と「企画型」です。今回の法改正ではどちらの型にも変更点があります。それぞれ見ていきましょう。
●「専門型」の変更点
これまで19の職種だった「専門型」の業務に1業種追加され、合計20種になりました。
追加されたのは「銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言の業務」で、簡単に言うと「M&Aアドバイザーの業務」です。
●「企画型」の変更点
裁量労働制導入時の手続きとして、労使協定締結と「労働者本人の同意」が必要になる。
健康・福祉確保措置の強化も必要。
<必要な対応をチェック>
・新規・継続どちらの企業も対応必須!
裁量労働制を新規導入する企業だけでなく、既に導入済みの企業も対象なのが大きなポイントです。継続だからといって何も対応していないと問題が発生します。
・専門型は雇用契約見直し
企業が裁量労働制で人を雇用する・している場合で、M&Aアドバイザーを雇用している企業では、雇用契約を見直して裁量労働制として再契約してもOKです。
・継続でも新たに労使協定を結ぶ
裁量労働制で契約している従業員が既にいる場合も、労使協定を新たに締結し、所轄労働基準監督署に協定届を届け出る必要があります。
・本人同意も必須!
労使協定は代表者と企業の間で合意をはかるものですが、本改正では労使協定とともに労働者本人の同意を得ることも必須です。忘れずに!
Scene.5 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大
ママはレーワが生まれた後、時期を見て職場復帰するって。
「まずは時短で」って言ってたから、ママも厚生年金・健康保険が会社から受けられるってことだよね!
そうだね!ママは未来でも仕事デキる人でバリバリ働いてるし、時短勤務じゃなくてフルタイム復帰したいただろうな。そのうちパパが専業主夫になってママの扶養に入っても、社保がちゃんともらえるね(笑)
短時間労働者の厚生年金保険・健康保険の加入が義務化されます。将来の人口減少と高齢化の加速が社会問題になる中、企業からの納税額が増を増やすことで高齢期の経済基盤の安定をはかる目的があります。また、「106万/130万の壁」という扶養範囲のためにあえて働き控えをしている人にも福祉を拡充し、安心して働ける環境を整備することで、労働力不足を補うことも目指しています。
大きな変更ポイントは「義務を負う企業規模の変更」と「時短労働者への適用拡大」です。
厚生年金保険・健康保険に従業員を加入させる義務がある企業の規模は、これまでは被保険者数が「101人以上」とされていましたが、今回「51人以上」となり、中小企業にも拡大されるということです。
今回の適用拡大に該当する「短時間労働者」とは、「週20時間以上の短時間労働」であり、以下の条件4点すべてにあてはまる従業員全員です。
・週の所定労働時間が20時間以上(残業時間は含めない)
・所定内賃金が月額8万8,000円以上(通勤手当、残業代、賞与は含めない)
・2ヵ月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない(定時制等を除く)
<必要な対応をチェック>
・開始時期
2024年10月1日~適用開始です。他の法改正は4月が多かったので、間違えないように気をつけましょう。事前準備が非常に多いのでお気をつけて!
・企業規模カウントを正確に
企業規模「51人以上」のカウントは「直近12カ月のうち6カ月以上、常時50人を超える」という基準で算定します。ですので、24年10月時点での企業規模は、23年10月~24年9月の期間に、企業に所属している厚生年金保険被保険者の人数で判断することになります。また、年齢が70歳以上で健康保険のみに加入している従業員と、今回の改正で適用範囲になる時短労働者は、10月の企業規模カウントには含めません。
・適用該当人数、個人の特定
厚生年金保険・健康保険の加入には個々の対象者に必要な書類や手続きが多々あります。適用拡大の要件に該当する短時間労働者は誰か、何人いるかを洗い出し、把握する必要があります。
・社内周知
社会保険の加入には保険料がかかるため、10月以降の給与明細に記載が始まることなどをあらかじめ説明しておく必要があります。個々への説明機会を設けるのが難しい場合、説明会開催なども必要です。
・加入申請
加入時に必要な書類を作成し届け出ますが、社会保険に関する申請は、2020年4月から特定の法人に対して電子申請が義務化しています。
Scene.6 障がい者雇用率の引き上げ
障がい者雇用は、設備面でも業務面でも企業の受け入れ態勢が必要だね。パパの会社でも、雇用促進のために、玄関にスロープがついたり誰でもトイレができたりしたよ。
ボーダーレス化が進むのはすごくいいことだよね。レーワが生きてる時代になれば、車は空飛んでるし、段差や移動手段のボーダーレスなんて当たり前だけど。令和ではまだまだ義務として進めなきゃなんだね。
やっとパパの時代にも良いところがあったことに気づいてくれた?!
いやいや。障がい者雇用の法律や義務って、今から60年も前に始まってるから。
え!そんなに昔から!?
障がい者雇用に関する法律自体は、1960年に「身体障害者雇用促進法」が制定さています。1987年に現在と同じ「障害者雇用促進法」に改正され、内容も段階的に改正を続けています。
障がい者の雇用率は60年の制定当初から定められていましたが、達成は「努力目標」で法的拘束力はありませんでした。また、雇用の対象となる障がい者も、1998年に知的障がい者が、2018年には精神障がい者加わっています。
障がい者の雇用率引き上げは、これまで段階的に進められています。2024年4月1日からは法定雇用率が2.5%に上昇し、0.2ポイントアップとなりました。促進法の対象企業規模も「従業員40人以上」となります。
<必要な対応をチェック>
・とにかく雇用推進!
障がい者雇用を進めて、雇用者数を確保する、これにつきます。
・今後に備えた雇用継続プラン策定
雇用率を守るだけでなく、25年、26年にも法定雇用率の改正と対象事業主の拡大が決まっています。2026年7月以降は雇用率2.7%、対象企業規模は従業員37.5人以上になる予定です。企業は本年度の改正のみでなく継続対応のプランを立てる必要があります。
・未達成にはペナルティあり
障がい者雇用率未達成の企業は、「障害者雇用納付金」を納付する義務が生じます。従業員規模101人以上の未達成企業が対象で、法定雇用率に対して不足する障がい者数1人につき毎月5万円を国に納付しなければなりません。
なお、この納付金は罰金・科料とは違い、国庫に入るのではなく、積極的な障がい者雇用を実施している企業に分配される「調整金」や「助成金」になります。
Scene.7 法律の改正ポイントをしっかり押さえて適正な人事対応を!
労働条件から障がい者雇用率まで、2024年の人事・労務関連の法改正は多岐にわたります。これから適用開始を控える「健康保険・厚生年金保険の適用拡大」もあり、年度初めを乗り越えてもまだまだ法対応は続きます。
人事・総務担当の方は、刻々と変わる法令をチェックしつつ、改正点に沿う運用準備が必要です。正しく、万全に準備を進めましょう!
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