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【はたらく みらい】団地の中に人と人、地域がつながるスペースを!

令和の時代。
仕事の在り方そのものが変わろうとしている。人々の多様性や生き方、価値観はどう変化するだろう?
AIなどの人工知能の発達は、どんな影響をもたらすだろう?

でも…

働きかたは十人十色! 人によって顔や性格が違うように、仕事も、働き方もいろいろ違う方が面白い。

いろんな人の働き方、生き方をリサーチすることで「はたらく☆みらい」を探求する、この企画。

合言葉は、わたしたちの未来は、きっと明るい

 

さて今回の「はたらく☆みらい」は、横浜市にある左近山団地で「トリオ左近山」というコワーキングスペースを管理している小山晴也さんに登場いただきます!

 

■東京大学大学院を休学してGoldilocks社に

編集部:まずは小山さんが「トリオ左近山」の管理人になった経緯を教えてください。

小山さん:僕自身が左近山団地で暮らしているのですが、あるとき、以前クリニックとして営業していた場所を改装して、コワーキングスペースにするための運営事業者を横浜市が公募していることを知ったんですね。そこで僕が今、社員として所属している株式会社Goldilocks代表の川路さんに相談したところ、面白そうだからやってみようよ、という話になったんです。川路さんとは「単純にコワーキングスペースを作るんじゃなくて、そこを起点にしたコミュニティ作りができれば面白いプロジェクトになるんじゃないか」という話をしました。

そんな話をしていたのが2022年の7〜8月。実はその時点ではまだGoldilocks社の社員ではなく東京大学大学院博士課程の学生だったのですが、プロジェクトが始まったことで大学院を休学し、その年の10月に社員としてジョイン。 2023年5月に「トリオ左近山」を正式オープンさせました。

 

 

 

編集部:あれ、ちょっと、前まで学生だったんですね。大学院ではどんなことを研究していたんですか?

小山さん

建築学の一分野で「建築計画学」というのですが、建物を作るときの手前にある考え方とか、基準みたいなのを整える学問なんですね。例えば住まいの間取りを作る上で、こういう家族構成だったらこの間取りが最適だよねとか、ひと部屋の大きさはこれぐらい必要だよね、といったことを研究する分野です。ご想像のとおり幅広い研究分野なのですが、中でも僕は特に“移住”に興味があって、実際に別荘地に引っ越した人にインタビューしまくっていました。

移住や引っ越しって「明日からここに住みますよ」みたいにスパッと切り替わるものではなくて、検討段階から含めて、現地を下見したり、家族を説得したり、ライフスタイルを変えていったりする移行期間があるものなんですね。主に若い人でスパッと全てが切り替わる時もありますが、負荷は大きい。そういう移行期間にあったら役に立つ建物、施設みたいなのを研究していたんです。訪ねてきた人がちょっと泊まれる場所とか、現地の人と話せるゲストハウスのような場所があるといいな、と思っていました。仕事を紹介してくれて、そこで仕事もできて、夜は家族が勉強や習い事に通えるとか。

▲クリニックだったテナントを改装して作られた「トリオ左近山」

 

■地域社会に触れることのできる団地が好き

編集部:なるほど、それが現在のコワーキングスペース運営にもつながっているのかな。先ほど団地に暮らしていると言っていましたが、団地が好きなんですか?

小山さん

団地は好きですね。左近山団地に住むのは現在が二度目で、一度目は横浜国立大学建築学科の学生だったときです。大学と行政と団地の人たちが連携して、団地に大学生を安く住まわせて地域で活動してもらう、というプログラムがありました。以前から「地域社会みたいなものに触れてみたい」という興味があり、大学のキャンパスからも近かったことから、部屋を借りることにしたんです。そのとき、住人主体で立ち上げた福祉交流施設である「ほっとさこんやま」の人たちと親しくなり、そこから団地に暮らす様々な人たちとの交流が始まっていきました。

二度目の入居は、大学院に進んでから。コロナの影響で大学院に通えなくなっていたので東京に住む必要がなくなり、それなら以前からつながりのあった左近山団地に戻ろうと。ここなら知り合いも多くいて、道ですれ違ったら挨拶できるような環境がありますし、コロナが収束して大学院への通学が再開したとしても通えます。ただ、今回はひとりで暮らすことがイメージできなかったので、友人とルームシェアすることにしました。しかしURが管理している賃貸物件で条件に合う部屋はなかったので、地域の知り合いの方経由で分譲物件のオーナーを紹介してもらい、直接契約しました。

 

編集部:今はどんな感じで働いているのですか?

小山さん

週に3日はGoldilocksの社員として勤務しています。と言っても本社に行くことはあまりなく、ここ(「トリオ左近山」)にいる時間がほとんどです。それ以外の日はフリーランスで団地内にある商店街のホームページ製作などの仕事をしたり、まちづくり系の支援財団でアルバイトしたり、割と自由に活動しています。

 

▲社員としての仕事も、フリーランスの活動も同じくらい大切と語る小山さん

 

■週3勤務の正社員、誕生

編集部:会社との出会いは?

小山さん

前述の川路さんが主催している「東京とんかつファイターズ」というイベントがありまして。普段は仕事の話などは一切せず、ただただ“とんかつ”を食べて愛でる会なのですが、そこに何度目かの参加したときに川路さんが以前勤めていた会社を辞めて独立起業するという話を聞きました。その会社のミッションが「半径100mの人と人をつなぐ」というもので、私が以前から興味をもっていた移住やコミュニティといった分野と妙に文脈が合っていたんですね。じゃあ一緒にやりましょうか、という話になり、最初は業務委託的に手伝っていたのですがトリオ左近山のプロジェクトが本格化していったタイミングで正式に社員になりました。同社初の社員です。

 

編集部:なるほど。でも週3日勤務の正社員って珍しくないですか?

小山さん

ですよね。社員になるというときに、僕としてはフリーランスとしての活動や財団での仕事も大事でそこの時間を減らしたくはない、だから週5勤務というのは違うと思う、という話をしたんです。会社代表も、ひとつの会社に全ての時間を捧げるみたいな時代じゃない、という思いを以前から持っていて、それなら週3勤務の正社員というトリッキーなことをやってみようか、という話になりました。

正直、週3勤務の従業員を正社員にするメリットは会社側にとってコスト的なメリットはあまりなく、非効率なのかもしれません。しかし、実際にやってみると税金や保険など様々な面での課題が見えてきて、ノウハウを得ることができました。

 

▲小山さんが勤めるGoldilocksのHP
https://goldilocks.social/

 

 

編集部:なるほど。そうしたノウハウがもしかしたら、次のサービス開発につながったりする可能性がありますもんね。会社では「トリオ左近山」運営の他に、どんなことをされているんですか?

小山さん

「半径100mの人と人をつなぐ」をミッションとしてソフトウェアを開発したり、企業のコンサルティングを行ったり、ワークスペースのプロデュースや施設運営を行ったり、幅広くいろいろな分野で活動しています。

 

■コストがかからない、人が集まる楽しい場所を

編集部:コワーキングスペースの運営って、ぶっちゃけ儲かるんですか?

小山さん

「トリオ左近山」自体は団地に新しい働く場を提供し、その利用実態や効果を調べるための実証実験として横浜市旭区から支援を受けている事業です。だから……というわけではないのですが、今後どう転んだとしても、めちゃくちゃ大きな収益が得られるビジネスにはならないでしょう。

ただ当社としては、ここを運営する過程で他の企業や人とのつながりが生まれたり、仕事につながっていったりする可能性があると思っています。それに什器の施工はほとんど、僕の母校でもある横浜国大の学生が行い、入退室の管理などもできるだけ人の手に頼らず自動化するなどコストを抑えた上で運営しているんですよ。

 

編集部:さて、小山さんは今後、このスペースをどうしていきたいですか?

小山さん

来年度からはコワーキングスペースに限らず、民営の図書館のような場所にするとか、子どもに何か教える教室を開くとか、その傍らで仕事している人もいるとか、さまざまな使い方ができる場所になるように、いろんな人を巻き込んでいきたいです。
いろんな世代の人が自然に集まってきて、めっちゃ楽しそうなことをしている、でも運営には全然コストかかっていない……そんな場所に育てることができたらいいな、と思っています。

 

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人と人、人と地域がつながるには、ちょっとしたきっかけが要る。そのちょっとしたきっかけを施設や建物の仕組み作りに落とし込んでいきたい。そんな思いが仕事の原動力になっている……と語ってくれた小山さん。自身が勤める会社選びや働き方も、そうしたテーマに基づいています。彼の真っ直ぐな人柄がよく伝わってくるインタビューでした。ご協力ありがとうございました!

▲「トリオ左近山」のウェブサイト。その製作も小山さんが担当

 

 

#プロフィール

小山 晴也(こやま・はるや)

1997年愛知県生まれ横浜育ち。横浜国立大学建築学科卒業後、2019年東京大学大学院入学。専門は住宅地マネジメント・災害復興。主な研究は別荘地への移住プロセス。博士課程在学中、自らが住む横浜市の左近山団地で2021年団地暮らし編集室を設立。地域内外での暮らし情報の流通促進を図る。2022年、大学院を休学し株式会社Goldilocks入社。同社が運営するコワーキングスペース「トリオ左近山」を立ち上げ、運営を行う。「人と人、人とコミュニティが仲良くなる心地よいプロセス」を探求中。 ガジェット・SaaSオタク。

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