【2024法改正】労働者派遣法改正で何が変わったの?
改正点と基礎知識をおさらい!
正社員として働いていると労働者派遣法はくわしくわからないな……。
派遣法は、働く人だけじゃなくて雇う側の人も知っておかないといけないことが多いのよ! しかも時代によってどんどん変わってるからね!
いろいろな働き方が選べる時代ならではの法改正なのかな。
そうそう! パパだっていつまで正社員でいられるかわからないんだし……。
え!(汗)
Scene.1 労働者派遣法とは?基礎知識をおさらい
「労働者派遣法」とは1986年に制定された法律です。「派遣法」という通称で広く知られています。
派遣法制定前は、企業と働く人の間に第三者が介在して中間マージンを取ることは「搾取」とみなされ、禁止でした。しかし、企業には働き手が、働く人には働き口が必要なので、実態として現在の派遣業に似たような事業を行う人が存在していました。そこで、労働者派遣事業が適切で安全に行われるために、「労働者派遣法」が整備されました。
「労働者派遣法」とは、労働者を守り、適切な環境で働けるためのルールなのです。
Scene.2 2024年の労働者派遣法改正で何が変わったの?
4月から始まった労働者派遣法改正で変更になったのは「労働条件明示」のルールです。以下の4つの項目に明示義務が追加されました。企業から派遣される人へ、場所・期間・条件などを「具体的に」明示することが義務化となりました。
1.就業場所・業務の変更の範囲の明示
すべての労働者に対して、就業場所と業務の変更の範囲を明示することが必要です。明示するタイミングは、企業と働く人が労働契約を結ぶ時、もしくは、有期雇用契約を更新する際とになります。
改正前にも就業場所と業務内容の明示は義務付けられていましたが、さらに「範囲」の明示も追加されています。「変更の範囲」は、つまり「今後の人事異動で変更が見込まれる就業場所や業務の範囲」ということです。
有期雇用人材(派遣社員や業務委託・契約社員など)は新規契約・契約更新のタイミングで明示できます。しかし、長期雇用が前提の正社員の場合は、雇用契約は入社時の1回がほとんどです。入社当時に将来の人事異動先や就業場所を予想して、具体的に網羅するのは現実的でないでしょう。対策として、就業場所・業務の変更の範囲はできるだけ広げて記載しましょう。さらに、企業内の「就業規則」で異動に関する条文に「企業の人事権によって就業場所の変更ができる」という内容を明記しておくとよいです。
2.更新上限の明示
更新上限とは、有期契約の通算契約期間、もしくは更新回数の上限のことですので、適用される対象は有期雇用人材なので、派遣社員や契約社員、業務委託として働く人となります。企業と派遣労働者が有期労働契約を結ぶ、もしくは更新する際に、更新上限の有無と、上限がある場合は詳しい内容を明示する必要があります。
また、「最初の契約締結の後に、更新上限を新しく設ける」「最初の契約締結の際に設けた更新上限を短縮する」という2つのケースでは、対象者に対し、事前に、詳しく丁寧に、理由も説明しておくことがとても重要です。
3.無期転換の申込機会の明示
労働者に対して「無期転換への申し込みができる」ということを明示する必要があります。有期雇用労働者からの申し込みによって、期間を定めない「無期労働契約」に転換できる「無期転換ルール」というものがあります。有期労働契約を、5年を超えて更新する際に「無期転換の申し込み権」が発生します。無期転換の申込機会の明示のタイミングとしては、「無期転換ルール」にのっとり「無期転換申し込み権」が発生するときがベストです。
4.無期転換後の労働条件の明示
「無期転換の申し込み権」を行使した人が実際に無期労働契になった後、労働条件を明示しなければならないという義務です。労働条件は、正規雇用労働者とのバランスに配慮して決定しましょう。なお、正規雇用と非正規雇用の労働者の間に不合理な待遇差を設けることは「同一労働同一賃金」で禁止されています。これをふまえた条件決定が必要です。
明示するタイミングは、「無期転換申し込み権」が発生するタイミングで示すのがよいでしょう。
Scene.3 労働者派遣法改正の歴史
「労働者派遣法」は働き方が多様化していく流れに応じ、変化の中で生じた問題に対応するよう法改正が行われてきました。法律制定時から2024年まで、どのような経緯・変遷をたどったのかを見ていきましょう。
■1986年:「労働者派遣法」制定
労働者派遣法の施行時、時代は高度成長期で、働き手がいくらでも必要な社会情勢が背景にありました。当初は、労働者の派遣対象は13の職種に限られていましたが、その後16業種に増えました。業務内容は「一部の特筆すべき技能を必要とする業務」とされていました。
・対象16種
ソフトウェア開発、取引文書作成、調査、受付・案内・駐車場管理、建築物清掃、秘書、事務用機器操作、デモンストレーション、財務処理、ファイリング、建築設備運転・点検・整備、添乗、通訳・翻訳・速記。機械設計、放送番組などの演出、放送機器などの操作が追加。
■1996年:ポジティブリスト制度
派遣の対象となる業種は「ポジティブリスト」と呼ばれ、人材派遣可能な業種に10職種が追加されました。追加されたのは、貿易や広告デザイン、インテリアコーディネーター、アナウンサーなどです。
90年代後半はバブル崩壊後の不況。企業は正規雇用者を増やせず、人材派遣に対するニーズが高まりました。
■1999年:対象業務のネガティブリスト化
大幅な規制緩和によって、原則として職種の別なく人材派遣が可能になしました。一方で、専門業務以外の派遣期間は1年限定でした。
また、これまでは派遣できる職種を決めていた「ポジティブリスト方式」でしたが、労働者派遣を禁止する職種を定める「ネガティブリスト方式」に切り替わりました。ネガティブリストに含まれていた派遣禁止の職種は、士業(弁護士、公認会計士、税理士など)・医療業務・港湾運送業務・建設業務・警備業務です。物の製造業務については「当面の間禁止」とされました。
■2000年:「紹介予定派遣」解禁と期間上限の緩和
派遣労働者の直接雇用促進のため「紹介予定派遣」が解禁されました。
■2004年:製造業務への派遣解禁
99年の法改正で「当面の間禁止」としていた物の製造業務へ派遣が解禁されました。また、物の製造業務のみ、派遣期間の上限は従来どおり1年に据え置きでしたが、2007年には再度変更され、すべての期間が最長3年に揃いました。
■2006年:医療業務への派遣が可能に
一定の条件をクリアする前提で、医療業務への派遣が可能となりました。
■2012年:規制の強化
派遣事業への規制緩和や派遣への需要の高まりによって、二重派遣や派遣の偽装などが問題化しました。また、いわゆる「派遣切り」が社会問題化したのもこの頃です。その流れを受けて、派遣労働者の権利を守るためのルールが強化され、「日雇派遣の原則禁止」「グループ企業内派遣の規制」「離職者の1年間の派遣の禁止」「人材派遣会社のマージン率公表の義務化」「派遣労働者への説明義務」など、規制が追加されました。
■2015年:派遣労働者保護の強化
派遣会社のコンプライアンス促進のため、すべての労働者派遣事業を許可制になりました。
また、労働者派遣の業務による期間制限により、「事業所単位」と「個人単位」の期間制限の上限は3年になりました。
さらに、派遣会社にも雇用安定措置の促進が求められ、キャリア形成支援制度実施の義務化、派遣労働者が希望する場合には無期雇用への転換や派遣先での直接雇用支援などが盛り込まれました。
■2020年:同一労働同一賃金
「働き方改革」が推進する一方、「格差社会」という言葉も生まれ、派遣労働者と正規雇用労働者の待遇格差も問題化した頃です。派遣労働者にも、同種の業務に従事する正規雇用者と同等の待遇が求められる「同一労働同一賃金」がルールとして盛り込まれました。派遣労働者の待遇の決定方法に関する改正も行われ、派遣先均等・均衡方式や労使協定方式が生まれました。
■2021年:派遣労働者への説明義務が強化
この頃には、新型コロナウイルスが猛威を振るいました。雇用形態を問わず、働く人には大きな行動制限、心理的ストレスがあり、企業にはハラスメント対策・健康経営が求められました。派遣労働者への賃金・待遇などの説明義務、派遣労働者からの苦情に対する処理義務が強化されました。
そして、きたる2024年、労働者派遣法が改めて改正されます。21年の説明義務をさらに具体化する流れといえるでしょう。
Scene.4 人事労務の法対応に困ったら管理システム導入がおすすめ!
多様化する働き方に対応し、さまざまな改正をつづけている「労働者派遣法」。これからも、社会情勢や時代の流れに応じて変化しつづけるでしょう。企業人事の頻繁な法改正に対応する必要があります。自社の人事労務担当者だけでは手が足りない、時間もコストもかかる、という企業には、管理システムの導入がおすすめです。人材管理機能を備えたうえで、頻繁に改正される労働者派遣法にも都度対応しているシステムを選び、人材管理に対する人的・コスト的負担を軽減していきましょう。
労働者派遣法は時代の流れや社会問題に敏感に対応してどんどん変わっていっているのがわかった?
うん。派遣切り問題やリモートワーク導入時は、パパもハラハラしたのを覚えてるよー。時代についていけるように頑張らなきゃなぁ。
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