【2024法改正】「裁量労働制」の変更点には企業が迫られる対応が山積み!
裁量労働制って、仕事がデキる人や売れっ子フリーランスの人がやってる働き方!っていうイメージだなー。カッコいい。
時間も場所も選ばない働き方だから、成果が上がるかも自分次第っていう面はあるみたいね。確かに、デキる人は業務時間の配分が自分でできるから、時間当たりで考えると実質的な賃金は上がるのかもね。
時間も場所も自分で選べるなら、パパも裁量労働制にしてほしい!パパが家にいられたら、お腹大きくて大変なママも助かるだろうし!
パパの仕事は裁量労働制適用業務じゃないでしょ。家で仕事するだけならただの「在宅勤務」です!
Scene.1 裁量労働制の基礎を押さえよう!
・そもそも裁量労働制とは?
「裁量労働制」とは、年俸制や月給・日給制などと同様、働き方・勤務形態のひとつです。業務に対する時間配分を労働者自身の裁量で決められ、成果があげられるならば勤務時間帯に縛りはないという特徴があります。企業は労働者の能力によって業務を任せられるので、企業と労働者の双方にメリットがあります。
・裁量労働制は2種類ある
裁量労働制には「専門業務型裁量労働制(専門型)」と「企画業務型裁量労働制(企画型)」の2種類があります。名称の通り専門職に適用できるのが「専門型」、経営や企画管理といった、いわゆるホワイトカラー職種に適用できるのが「企画型」と分けられていれます。
・適用には制限がある
裁量労働制はどのような業種・業務にでも適用できるものではありません。導入できる業種に制限が設けられている点には注意しましょう。
裁量労働制では、企業と労働者の間で「労使協定」を締結し、労働者が行う業務に必要な時間を大枠として定めます。その時間を超過しないようにするのも労働者の裁量の内なので、超えてしまった場合も残業代は支払われません。そのため、裁量労働制は適用できる職種が限定されているのです。
Scene.2 裁量労働制改正の背景
裁量労働制は、企業にも労働者にもメリットの多い働き方ですが、勤務時間帯に明確な縛りがないことで、長時間労働や深夜労働に陥りやすいというデメリットもありました。
・労働者のデメリット
労働者にどれだけの負荷がかかっているのかが企業には見えないので、健康確保やモチベーション維持も自力で行う必要があります。また、ひとつの業務対する工数管理が曖昧になりがちなので、業務効率化しにくい点も不安要素です。
・企業側の問題
裁量労働制が適用できる職種には制限があるにもかかわらず、適用職種ではない業務に従事している労働者にも適用するというケースが発生していました。裁量労働制の「業務時間に縛りがない」という部分のみを利用したもので、不適切な運用と言わざるを得ません。こういったケースでは、長時間・深夜労働の管理不行き届きや、本来なら支払われなければならない残業代が未支給にされるといった問題が起こりました。
実情と問題点を踏まえ、長時間労働の改善とより柔軟な働き方の実現に向けて労働基準法施行規則が見直された、というのが本改正の背景です。
Scene.3 裁量労働制の具体的な変更点と対応のポイント
今回の法改正では、裁量労働制には2つの型のどちらにも改正点があります。
●専門業務型裁量労働制(専門型)の変更点
・対象業務の追加
裁量労働制ができる業種が1種類増加し、20業種となりました。追加となった業種は、「M&Aアドバイザー」で、いわゆる企業統合といった際のコンサル業務です。M&Aアドバイザーを雇用する際には、裁量労働制で契約することが可能になりました。
●企画業務型裁量労働制(企画型)の変更点
・賃金や評価制度の説明義務
企画型の変更点としては、企業から裁量労働制で働く対象者へ、賃金や評価制度についての「説明義務」が課せられることになりました。説明する項目については、あらかじめ社内で運営規程に定める必要もあります。
また、運営規程の変更を踏まえ、労使協定の決議項目も変更しなければなりません。つまり、企画型裁量労働制の労使協定で定めなければいけない項目が加増したことになります。
Scene.4 裁量労働制改正への対応のポイント
裁量労働制の改正は、4月1日から適用が開始されています。以下の2つのポイントを押さえた対応ができているかチェックしてみましょう。
・企業は、新規でも継続でも対応が必要
ポイントの1つ目は、4月1日以降に裁量労働制を新規導入した企業だけでなく、これまでも裁量労働制を実施している継続の場合でも、本改正にもとづく対応が必須だという点です。継続実施のための対応をせず、従来通りの運用をしている企業があったら、すぐに運営規定の改正実施が必要です。
・労使協定の締結
ポイントの2つ目は、裁量労働制を新規導入・継続する際には、企業と労働者の間で労使協定を締結しなければならないことです。裁量労働制で働く労働者が「専門型」でも「企画型」でも必要です。また、協定締結とともに、「本人の同意」も必須です。
労使協定締結については、さらに細かな要件があります。次の「注意点」で詳しく見ていきましょう。
Scene.5 裁量労働制に付随する労使協定の注意点
「専門型」でも「企画型」でも、裁量労働制で労働者を雇用する場合には、以下の3点の手続きが必要です。
・労使協定締結と届け出
・本人の合意を得る
・健康・福祉確保措置の強化
「健康・福祉確保措置」は、裁量労働制で働く人が健康的に働き続けられるようにするためのメニューです。具体的には以下の6つになります。
・対象労働者の勤務状況や健康状態に応じて、健康診断を実施する
・働きすぎ防止のため、年次有給休暇について、連続してまとまった日数を取得することを含め、取得を促進する
・心とからだの健康問題についての相談窓口の設置
・対象労働者の勤務状況や健康状態への配慮として、必要な場合に応じて適切な部署への配置転換
・必要に応じて産業医などによる助言・指導を受ける。または、対象労働者に産業医などによる保健指導を受けさせて働き過ぎによる健康障がいを防止する
※対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、対象労働者への裁量労働制適用について必要な見直しを行うことを協定に含めることが望ましい。
【参照】厚生労働省「対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容」
企業は、コンプライアンス遵守とともに、健康経営への社内体制の整備もしなければなりません。なお、正社員や契約社員、派遣社員などの雇用形態にかかわらず、裁量労働制で働いている全従業員に対してこれらの対応が必須です。個々の従業員と労使協定締結と同意、付帯する措置強化が必須なので、膨大な手続き必要になりました。
Scene.6 裁量労働制は管理システムで適正にマネジメントを!
裁量労働制で雇用できる従業員には派遣社員も含まれます。ただし、前述のように企業との間に労使協定の締結と、健康・福祉確保措置の強化が必須条件です。手間やコストとのバランスを考えながらコンプライアンスを守り、従業員を適正活用することは、人事にとって大きな課題です。適切な運用に悩んだら、管理システムを利用することがおすすめです。
裁量労働制では、働く場合の不明瞭な勤務時間や深夜・長時間勤務といった、見えなかった勤務体制を見える化し、労働の実情を把握するのに役立ちます。また、労使協定や法改正にも対応しているものがほとんどなので、つぎつぎに実施される法改正にも慌てずに済みます。
1個の法改正なのに、やることが多くない!? 誰が裁量労働制の契約なのか確認して、契約更新して、労使協定と同意、健康措置……。覚えきれない……。
そうなの!裁量労働制の変更は、24年度の法改正のなかでもダントツに事前準備必要なの。でも、働く人を守って、企業もズルをしないっていう明確なルール決めなんだよ。
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