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短時間労働でも社保加入できます
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【2024法改正】厚生年金保険・健康保険の適用拡大!
短時間労働でも社保加入できます

これまで正社員やフルタイム勤務の従業員にのみに適用されてきた厚生年金保険・健康保険が、2024年10月以降は時短勤務やパート・アルバイト勤務で働いている人も、一定の条件をクリアしていれば加入できるようになります。
また、厚生年金保険・健康保険に従業員を加入させる義務を負う企業の規模にも変更があり、今後は中小企業も対象になります。
さまざまな働き方が認められている現在、あえて時短勤務を選んでいる人も多いので、正規雇用者と同じ福祉を受けられることは、働く人にとって大きなメリットです。
さまざまな業界・業種で深刻化している人手不足の有効な解消手段となるでしょうか?

ヘイセイ君

時短勤務ってことは、アルバイトやパートの人も厚生年金保険・健康保険に加入できるんだよね。じゃあ、ママも産休明けは時短にするって言ってたから、社保に入れて安心だね!

レーワちゃん

ママは未来でもバリバリ働いてるよ。整った福祉が受けられて、正社員復帰も早かったし!

ヘイセイ君

えー。もっと大黒柱のパパを頼ってくれていいのに~。

レーワちゃん

ママの方がしっかりしてるし仕事も早いから、グングン昇進するよ。パパが時短勤務の主夫になる日も遠くなかったりして(笑)

 

Scene.1 社保って何? 厚生年金保険・健康保険の基礎知識

企業が従業員を加入させる「社会保険(社保)」には2つの意味があります。ひとつは「広義での社会保険」と呼ばれるもので、厚生年金保険・健康保険・介護保険・雇用保険・労災保険の5つの保険の総称です。一方、「狭義での社会保険」では、厚生年金保険・健康保険・介護保険の3つが含まれます。一般的に「社会保険」と呼ぶ際にはこちらを指すことが多いといえるでしょう。

2024年10月から改正される厚生年金保険・健康保険の内容は、ざっくり分けると「加入させる義務を負う企業規模」「加入対象者」の2点です。まずは、これまでと10月以降で違いを比較してみましょう。
 
●厚生年金保険・健康保険に加入させる義務を負う企業規模
・従来の加入義務を負う企業規模
厚生年金・健康保険への加入義務を負う企業規模は、2016年以降、段階的に拡大してきました。
・2016年:社保加入義務を負う企業規模が「従業員数501人以上」に変更。
・22年10月:同じく企業規模が「従業員数101人以上」に。

・10月以降の対象企業規模
従業員を厚生年金保険・健康保険に加入させる義務を負う企業規模は「従業員数51人以上」となります。

これまでの変遷を見ると大企業を対象として適用範囲が拡大してきましたが、今回の改正によって中小企業にも波及することになりました。

●厚生年金保険・健康保険の加入対象者
・従来の加入対象者
これまでは、以下に該当する従業員を雇う際、企業には、厚生年金保険・健康保険に加入させる義務がありました。

・正社員
・フルタイム勤務従業員
・労働日数が正規従業員の3/4以上のパート・アルバイト従業員

・10月以降の加入対象者
2024年10月以降の変更点さらに、厚生年金保険・健康保険に加入させる従業員の条件も「短時間労働者の中で要件をすべて満たしている従業員全員」に拡大します。つまり、これまで厚生年金保険・健康保険への加入義務の適用範囲ではなかった「時短就労のパート・アルバイト従業員」も対象となることとなります。
なお、「週20時間以上の短時間労働者」の中でも、以下4つのすべてに該当する従業員全員です。

【時短勤務者の条件】
・残業時間以外で週の労働時間が20時間以上
・所定内賃金が月額8万8,000円以上
・2カ月を超える雇用(の見込み)がある
・学生を除く(※定時制学校や休学中の学生は除く)

所定内賃金の「8万8000円」には、残業代・通勤手当・賞与は入りません。
また、学生は基本的に含まれませんが、定時制学校に在学している人や休学中の学生が従業員として時短労働に従事している場合は、適用対象となります。
 

Scene.2 厚生年金保険・健康保険の改正によるメリット・デメリット

厚生年金保険・健康保険制度の改正は、労働者・企業国・国の三者それぞれに影響が出ます。それぞれが受けるメリット・デメリットを確認しておきましょう。
 
●メリット
厚生年金保険・健康保険制度の拡充で一番大きなメリットを受けるのは労働者です。社保に加入する従業員は、厚生年金に加入できるので定年後の年金受取額が増加します。時短勤務でもフルタイムで働く従業員と同様の福祉が受けられるのもメリットです。
また、厚生年金保険の費用は企業から国に払われるので、国としては税収が上がります。

●デメリット
一方、従業員を加入させる義務を負う企業側にはデメリットが生じます。雇用者に対する支出額が増加する点です。ただし、社会保険加入は従業員への福祉拡充です。仕事に対するモチベーションアップ、業務効率化、安定した就労定着にもつながります。決してマイナス面だけとは限りません。

なお、加入義務を果たさない企業には罰則があります。もし加入対象となるパート・アルバイトなどの従業員をわざと加入させないと、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。場合によっては、未納額に対する延滞金を上乗せして支払いが課される恐れもあります。
 

Scene.3 厚生年金保険・健康保険の適用範囲の理由

厚生年金保険・健康保険を受けられない時短労働者が多い理由には、さまざまなものがあります。育児や介護などによって物理的に労働時間を短くしなければならないケースや、配偶者の扶養から外れないためにあえて時短勤務を選んでいる「働き控え」などがあげられます。こういった人たちは、厚生年金保険・健康保険の加入対象とはなれませんでした。今回の制度改正の背景には、こういった克服すべき社会的な問題が背景にあるといえるでしょう。貴重な労働力にじゅうぶんな福利厚生が行き届いていない状態の適正化が目的のひとつです。
 
●高齢化と業種を問わない慢性的な人手不足
加速の一途をたどる高齢化による働き手不足は、団塊の世代の一斉退職が問題化した2007年以降も続き、今なお多くの労働者が長期間労働で穴埋めしなければならない状況です。
また、出生率低下も止まらず、今後の人口減少も、人材確保の大きな課題です。
社会保険制度は、労働者が減ること=加入者減少なので、国の税収確保が困難になります。10月からの制度改正では、社会保険加入対象か拡大することで、下降する税収に歯止めをかけること、増収を年金に反映することで高齢期の経済基盤を安定化することが大きな目的だといえるでしょう。
時短勤務でもじゅうぶんな福祉を受けられれば、定年後の再雇用を希望する人の増加が見込めます。意欲やスキル・経験のある高齢者を労働人口として積極的に活用することにつながるでしょう。

・男女均等な総活躍社会への障害
扶養範囲内の賃金収入のボーダーラインを超えないように、働き控えをしている労働者も多く、「106万/130万の壁」は社会問題化しています。働き控えをしている人は既婚・産後の女性が多く、こちらも、働く意欲とスキルがあるのに「あえて時短」の潜在的人材といえます。扶養のボーダーを気にしなくて済むのなら、会社の社会保険に入りたい女性は多くいます。
また、出産・育児は大きなライフステージの転換です。女性のキャリア中断や、離職、望まないキャリアチェンジは、「ある意味仕方がないこと」と諦められてきました。これが女性の社会進出・活躍の妨げになっているといわざるを得ません。制度改正によって時短勤務でもしっかり福祉を受けられれば、雇用形態を変えるだけでキャリアの継続はしやすくなります。産休・育休後の復職へのハードルも低くなるでしょう。
 

Scene.4 まだ間に合う!10月までに必要な対応

厚生年金保険・健康保険の制度改正が開始される10月まで目前です。期限までに、企業が実施しなければならない対応は5点あります。自社は対応できているか、自分は適用してもらえるか、確認しておきましょう。

(1)厚生年金・健康保険の適用拡大の要件に該当する短時間労働者は、誰か、何人かを洗い出す。
(2)新たに社会保険適用拡大の対象となる企業(特定適用事業所)は、「特定適用事業所該当届」を提出して、社保に加入させる短時間労働者の被保険者資格取得の手続きを行う。
(3)厚生年金保険・健康保険の加入時に必要な書類を該当者分作成し、届け出る(届け出の方法に要注意)。
(4)社会保険の加入には保険料がかかるため、該当者には10月以降の給与明細に反映される旨を事前に説明しておく。
(5)社内への周知方法としては全社通達を出すだけでなく、該当者本人への説明が必要。個々の対応が難しい場合は説明会開催といった方法も検討する。

 
●改正に対応した契約・勤怠の管理に困ったら管理ツールを検討しよう!
さまざまな法改正に対応しながら、コンプライアンスを遵守した人材管理を進めるには膨大な手間がかかるものです。10月の改正を前にした今、法令改正への随時対応や派遣社員の人材管理に大きな負担を感じている企業には、思い切って管理システムの導入も視野に入れるのがおすすめです。契約・勤怠の管理も一元化でき、派遣先が派遣元へ提供しなければならない「事業所抵触日通知」や「待遇情報の通知」など、人事担当者の大きな負担となっている業務も大幅に工数削減が見込めます。また、紙運用を行っている企業では、クラウド型システムを選べば圧倒的にペーパーレス化も進みます。

ヘイセイ君

厚生年金保険・健康保険が拡充するのは、働く人にとってはいいこといっぱいだね!でも、やること多いなぁ……。

レーワちゃん

でも、この時代って「将来、年金制度がなくなる?!」ってよく言われてたんでしょ? しっかり国に年金を貯めるシステムを早く作って、レイワがおばあちゃんになっても年金がある国にしてね!

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